はじめに
登山の三種の神器といえば、「登山靴」「レインウェア」「ザック」である。
「その次は?」と尋ねられたら、個人的には「芍薬甘草湯」(しゃくやくかんぞうとう)と答えたい。
芍薬甘草湯とは漢方薬で、筋肉の痙攣をやわらげる効果があり、足攣り解消の特効薬である。
今回は芍薬甘草湯の有用性について述べていこうと思う。
目次
登山中に足がつる
登山で足が攣った経験はないだろうか。
筆者はこれまでに2度ほど経験した。
鷹巣山(たかのすやま)
奥多摩湖ダムサイト下の水根バス停から六ッ石山を経て鷹ノ巣山へ登ったときのこと。鷹ノ巣山頂手前の急登でひざ上の太ももが痙攣(けいれん)して、足を踏み出すことが出来なくなってしまった。
なお、鷹巣山は雲取山の東側に位置し、石尾根道でつながっている山である。この山頂からの眺望はすばらしく、大菩薩嶺、富士山、三頭山、御前山、大岳山、丹沢山塊と東京近郊の名のある山々が一望できる。行ける範囲に住んでいるのならば一度行ってみることをおすすめする。
塔ノ岳(とうのだけ)
ヤビツ峠バス停から二ノ塔、三ノ塔を経て表尾根コースで塔ノ岳へ登ったときのこと。塔ノ岳山頂手前の急登でまたも同じ部位が痙攣して、動くことが出来なくなってしまった。
塔ノ岳は言わずと知れた丹沢の表玄関の山である。
原因
ひざ上の太ももは、正式には大腿四頭筋という部位である。
筆者の症状は、こむらがえりのようにカチカチに硬くなるのではなく、太ももが痙攣し、ヒザから上にチカラが入らなくなる状態になった。
これは想像していたよりも恐ろしい状況であった。山中にあって動くことが出来ない。自力で進むことも、戻ることも出来ないのである。
上記の2回とも原因は足の筋肉への負荷のかけ過ぎである。どちらの山も山頂までアップダウンを繰り返すことと、ロングコースであるがために下山時間が気になり、無意識にペースが上がってしまったためである。
山登りでは、日頃からの下半身の筋力アップ、攣らないための歩き方など、注意を払うべき点は多い。
が、いざ攣ってしまった場合は反省しても後の祭りである。反省は下山後にすることにして、その場では効果的な処置が必要である。
芍薬甘草湯の効果と即効性
このような状態になったら芍薬甘草湯の出番である。服用方法は、葛根湯を思わせる漢方薬特有の匂いの顆粒を水で流し込む。
この薬の特筆すべきところはその即効性である。あらかじめ知ってはいたが、いざ服用したときの回復の早さには正直言って驚いた。
服用から数秒で症状が和らぎはじめ、5分もすれば完全に治る。
どのメーカーがよいか
市販の漢方薬の効果については、メーカーによる違いは無いそうである。
各社から発売されている芍薬甘草湯であるが、2大メーカー(ツムラ、クラシエ)が入手しやすいと思われる。
一包あたりの価格はツムラもクラシエも100円程度で変わらない。クラシエのほうが梱包数が少ないぶん安価に入手できる。
よって筆者はクラシエのものを愛用している。
こむら返りと手の指つり
筆者の家族は冷え性で、寒い季節には頻繁に手の指を攣る。また、年に2、3回は就寝中に「こむら返り」も起こす。
芍薬甘草湯はこれらの攣りにも即効性がある。というよりも、もともとこれらの症状の対処薬である。
最初はプラセボだと一笑に付していた家族であるが、今では就寝中のこむら返りに備えて枕元に常備するほどに信頼を寄せている。
最後に
この薬には副作用がある。よって、予防薬として常用してはいけない。あくまで緊急時の薬としてのみ服用すべきである。
筆者も血圧が高く禁忌事項に触れる。ただ、どうしようもない時には使う。効果とリスクとのトレードオフである。
登山の際は、ファーストエイドキットにこの薬を2包ほど忍ばせておくと良いだろう。1包は自分自身のために、もう1包は山で出会った困っている人のためにである。
以上